ワイン生産の超大国といえばフランス、イタリアであり、作付面積も両国とも |
ドイツの代表的な白ワイン用ブドウ、リースリングについて
醸造用ブドーの王者リースリング リースリングというブドーはワインへと変身する際、著しく優れたデリケート極る個性を発揮し、 (2)リースリング (3)ピノ・ノアール (4)シャルドネ としてリースリングを白ワイン用ブドーのトップにあげています。一般にワインが赤白の順ですから カベルネソーヴイニヨンの下におかれているのはやむをえません。 従って今日では世界各国でリースリングの栽培をしていますが、不思議なことにアルサスを除けば、いづこの国においても、その優れた個性を充分に発揮できるとはいえません。 やはりリースリングはその父祖発祥の地、ライン河畔固有の土質とドイツの気象朱件下においてのみ、その優れた個性を全面発揮できるのです。 つまり王者リースリングこそがドイツワインを重視させる決定版といえるかも知れません。 以上の様に、ドイツワインだけが、全世界のワイン中唯ひとつユニークな性格を呈する理由は、北緯50度圏つまり樺太シベリア並の亜寒帯(例、樺太平均気温3・5度C)で、トドマツ・エゾマツの他、ツンドラしか生息しか−筈の北緯50度圏の中で、地球上唯一カ所だけ残された、温帯植物の花と言われるブドーを育てる、年間平均9・5度Cの温暖な10万ヘクタールのフドー畑が、南ドイツだけに横たわっているからです。 |
ドイツワインはブドウ自体の検査時点での実力本位の格付けであり、
フランスは畑の格付けが主体となる
格付法の違い ワインの品質の格付法だけは又、オーストリア等 1〜2を除き、全世界中、唯一ドイツ独特の方法により、ワインが格付けされることは、早や余りにも知られています。フランス始め、ワインの格付けは、決められた原料ブドーの育つ畑の格に応じて呼称されるもので、 従ってドイツワインだけは、ヴインテージチャートが殆ど不必要で、たまたま悪い天候の年であったとしても、その収穫物自体が、法的にカビネットクラスであれば、そのワインはカビネットワインで、アウスレーゼであれば、アウスレーゼワインであり、逆に、或る恵まれた良い年であったとしても、その収穫物がたまたま未熟ブドーであれば、いかに良いヴインテージであったとしてもQbAワイン以上は造れません。 つまり天候の如何にかかわらず、原料ブドーの塾度による格付は、数値で決められていますので、天候とは関係ありません。敢えてヴインテージを論議するなら、好天候に恵まれた年には、高い格付けのワインの量が、沢山できるであろうし、その逆は又逆現象となりうると言う事だけで、いかなる天候下であろうと、収穫物の熱度によって,ワインはその原料ブドーの質で決まり,カビネットはカビネット、アウスレーゼはアウスレーゼに変わりありません。 フランスの様に高い格付けをされている、例えばシャンベルタンと言うワインであっても、たまに襲ってくる、最悪のヴインテージの収穫物で、例えばやむなく補糖醗酵さえ要したとしても、第一級品たるシャンベルタンは、常にシャンベルタンと言う第一級のワインであるわけですから、この様な国では、確かにヴインテージチァートは大切な指標となりましょう。 ヴインテージの善し悪しを見ずして、そのワインの質の善し悪しは、軽々しく言えないでしょうから。 |
ドイツワインの寿命は世界のワインの中で最も長寿である
ワインの寿命 更にもう一つ、大方の誤解を解くドイツワインの特徴を一点述べておきます。それは世界中のワインの中で、ドイツワインが最も命の長いワインなのです。 一般には誤解され、フレッシュ アンド フルーティーを尊んで早飲みを勧め、いかに優れたワインでも、 ましてやカビネットクラスともなれば、先ず10〜20年で味香の展開がようやく期待されます。 安カビネットで10年、高級カビネットで20年、ましてやAusleseクラスともなれば、20年〜50年以内で飲むのが勿体ないと言う感じです。 BA. TBAにもなると、先ず100年単位の命で、ワインは総て、自己の命いっぱいに熟成上昇しますので、早飲みは損のもとです。但しドイツの中でも、フランケン系統のワインは、短命ですから 一般に少し名のある酒店では、当方の貯蔵だけはしっかりしているよ、と主張する店が多いのですが、短時日で劣化した以上、貯蔵に欠陥があったものと心得て下さい。貯蔵の条件は、よく知られている通り温度、湿度の恒定化と各種振動と螢光燈光線をさけるという他にもう一つ大切なのはエアーコンディションです。出来るだけ室内の空間を大きくし、ワインの窒息死を防ぐことです。 ビンを逆立ち立づみを長期間すると又窒息の恐れがあります。ワインの命を左右する物は (1)貯蔵の条件 |
ドイツワインの開栓後の寿命
開栓後の興味 ドイツワインは開栓後の命も長い。 はっきり言えば、10本中8本は、開栓時より次の日が明らかに良くなっているのが認められ、10本中2本も、開栓時と余り変わらない事は認められても、一日にして劣化するワインは無いと思っても大きな誤りではありません。 従って、良いワインになればなる程、開栓後毎日少量づつ味わって、味の上昇と変化とを数日観察してみるのは、ワイン愛好家にとっては、大きな楽しみです。そして余りに長すぎ、遂に劣化したとしても、その間の、変化の追求という、非常に面白い経験が出来ます。そこで一回では飲み尽くせない一ビンと思っても、遠慮なく開栓して楽しめる量だけ楽しんでください。後は嗅が入らぬように軽く栓をして立てたまま、柔らかい温度の冷蔵庫にいれて、後日又残量を楽しめばよいのです。 一般のワインの様に、残りビンからポンプで空気を引抜くとか、或いは別の小ビンに移し変えて空気との接触をできるだけ避け、なるべく早めに飲むこと、という一般的な配慮は不要です。 但し、一度開栓したコルクで再び軽く栓をする時は、必ず元通り(下ぶくれ)に入れて下さい。入れにくい為逆に差し込まないこと、逆栓は劣化を早めます。 |
ドイツワインの日本への紹介者
古賀 守氏の経歴
古賀 守(こが・まもる) 1914年(大正3年)長崎県佐世保市の醸造家に生まれる。家業を継ぐため、東京農業大学農芸化学科に学ぶ。卒業後1936年から1945年まで、ドイツのハイデルベルク、ローストック、ライプチッヒ各大学の哲学部で化学を専攻。 終戦後帰国し、壊滅した家業を離れて一時、高校教師などをした後、再びワイン業界に入る。1985年、ドイツ連邦共和国より勲一等十字章受章。 現在、日本輸入ワイン協会名営舎長、(社)日本ソムリエ協会顧問・名誉ソムリエ、 著書『ドイツワイン』(柴田書店) |